第85回 東京インターナショナル・ギフト・ショー春2018 LIFE×DESIGNセミナーの「ローカル・クリエーターズ・マーケット 暮らしの中に隠れたさまざまな逸品」にてsome-zomeが紹介されました

第85回 東京インターナショナル・ギフト・ショー春2018 LIFE×DESIGNセミナーの「ローカル・クリエーターズ・マーケット 暮らしの中に隠れたさまざまな逸品」の報告会において我々のsome-zomeが墨田区代表として発表。

 

 

ムービー(Sumida Textiles | Hand-dyed in Tokyo)

 

 

テーマ:Local Creators’ Market(ローカル・クリエーターズ・マーケット) 暮らしの中に隠れたさまざまな逸品

日時:2018年1月31日(水)13:30~15:00

会場:東京ビッグサイト 東2ホール会場内

http://www.giftshow.co.jp/tigs/life3invitation/seminar.htm#date_a

 

ストーリーブックが来場者に配られました。

 

以下、ストーリーブック日本語訳

 

 

江戸時代(1603-1868年)、水路が張り巡らされた江戸の町では染色業が発達し、着物の染料を川で洗う光景がそこここに見られた。それは形を変えて現代に生きている。

 

 

(左から)
格子柄プリント+グラデーション染め
丸柄絞り染め3回重ね(レッド〜オレンジのスワッチ)
ムラ染め(コーラルのストール)
刷毛染め(イエローの麻ストール)
多色ランダムスプレー(ブルーのスワッチ)
ムラ染め(ターコイズの麻ストール)
白切子柄プリント+グラデーション染め(ネイビー)
上下多色グラデーション染め(ブルー〜イエロー〜オレンジ)

 

 

無数の色が即座に生まれる

江戸紫という少し青みがかった紫がある。有名な歌舞伎の演目『助六』で助六が巻くはち巻きの色で知られるが、江戸時代に流行った東京の色といってもいい色だ。現在の東京はどうだろう? ファッションも街も刺激的な多くの色彩に満ちている。今の東京を色で表すならば、無限の色彩というのがふさわしい。東京における手染めは、この無限の色彩を正確に再現する。さらにいえばそこにスピードも加わる。

たとえば、布チップ、あるいは紙で色見本が添えられた注文書がきたら、染工場でこれまで蓄積してきた膨大なデータから即座にその色を染色して見せることができるのである。極端な例では、染める前の製品と色見本をバイク便で染工場に送ると、その日のうちに染められてクライアントの手元に届く。アパレル産業が集中し、展示会なども多い東京でそのメリットがどれほどか想像できるだろう。

染色の基本は赤、青、黄の三原色で、その掛け合わせで色を表現する。エメラルドグリーンのような色を特別に鮮明で青みのある黄色と特別に鮮明なターコイズブルーを合わせて色を出すことを除けば、基本的に三原色であらゆる色が表現できる。もちろん染める製品の素材は多種多様だし、異種素材の組み合わせも最近の流行だ。染色して洗うことで仕上がりの色も微妙に変化するから、染料の調整もそれだけ複雑になる。三原色が同じぐらいのバランスで入っている中間色のグレーとかベージュを染める場合、赤が少し強ければピンクになるし、青が強ければグリーンになってしまったりする。複雑さを挙げたらきりがない。

それらを補うのは、過去のデータや、1kgあたり0.0001%まで染料を量って調合する技術、分光光度計とコンピューター管理でさらに正確で効率のいい色再現を行う内田染工場のような例もあるが、いずれにしても最終的にものをいうのはやはり職人の勘なのだ。彼らは口を揃えて言う。「見本を見ればすぐにわかる」と。

そしてもう一つ、小ロッドへの対応が可能なのは、連続染色機を使わない手染めならではといえる。10〜20点の製品染めから対応できるのだ。内田染工場でいえば、現場のスタッフは12〜13人で、1人が5〜6台の染色用の釜を担当し、それが1日に2回転する。この小さな工場でなんと1日に少なくとも100種類以上染めているとは!
日本では特に、色落ちに対するペナルティが高い。あえて色落ちで風合いを出す場合を除けば、色が落ちるということは染め屋が下手だということになる。製品を預かって染めるわけだから失敗した時のリスクも常に秘めている。そういった緊張感の中で職人たちは、黙々と無限の色を生み出し続けている。

 

 

上・境目のないグラデーションは手作業だからできる。
左・過去の蓄積データを元に色の調合はコンピューターが行う。
下・膨大なカラーサンプルの一部。染料の調合データもすべて蓄積されている。
いずれも内田染工場。

 

 

 

独自ブランド「some-zome」のシャツを着た内田染工場の若き職人たち。江戸をテーマに、絞りやプリント、グラデーションなどを用いてデザイナーの白木ゆみ香氏がデザインした。

 

 

 

色彩に満ちあふれた東京。東京のシンボル、東京スカイツリーのライトアップは江戸をテーマにデザインされていて、時間、日によって色が変化する。

 

 

 

多種多様な手染めの技術

手染めということには若干の説明が必要かもしれない。
江戸時代の手染めは、染料を入れた鉄の釜に直接火を当ててそれを手でかき回していた。今ではそれを工場内に居並ぶパドル染色機がやってくれるが、それは人の手が染色機の羽根に代わっただけで手染めとなんら変わらない。そこに至る染料の調合の過程は手染めそのものだ。

川合染工場の「東炊き(あずまだき)」は、厚い麻をも柔らかい風合いに染める独自の技術だ。素材や織りの違いによる調整に非常に手間がかかり、機械で同じ風合いを出すことは不可能なのだが、染色用の釜で50〜200mずつ染めていく。1000m染めるなら5回染めを行わなければならない。通常、多くの染工場の連続染色機で対応するのは最低でも500m。今どき100mから染めようなどと考える工場はまずない。川合染工場では現在71素材の東炊きをこなす。

黒沼染工場には、コンサートやイベントのノベルティやアパレルの製品として、10枚から数百枚までのTシャツやパーカーのシルクスクリーン印刷の注文が絶えない。
これも顔料で1枚1枚手で刷っている。多色刷りは最大で十数色。それも1色ずつ染めていくのである。プリントと染色のかけ合わせも黒沼染工場の得意とするところだ。

内田染工場のグラデーション染めは1度に染められるのが30〜40着。バーに吊るした製品を、染料の量を変えていきながら、製品を逆さに吊るしたりしては繊細なグラデーションをつけていく。社内でもできる職人は3人しかいない。機械によるグラデーション染めより色と色の境目がないと評価が高い。

some-zomeという独自のブランドで東京の手染めの新しい形がこれから展開されていく。

写真キャプション:絞り染め(黒)と刷毛染め(青)を重ねたシャツ。何種類もある特殊な染め方、洗い、染料と顔料の使い分けなどで多種多様な色と質感を表現できる。

 

 

 

上左・シルクスクリーン印刷も一枚一枚手で行う。(黒沼染工場)
上右・グラデーション染めは熟達した職人のみできる。(内田染工場)
中左・データだけではなく職人の勘も色を決める。(黒沼染工場)
中右・コンマ3桁まで天秤で染料を量る。(川合染工場)
下左・一枚一枚脱色するので同じものは2つとない。(黒沼染工場)
下右・均等に色を染めるパドル染色機は人の手の延長。(川合染工場)